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建築基準法12条の定期報告|神奈川の特定行政庁12市+県で、対象も周期も違う
建物は3年ごと、エレベーターは毎年。しかも対象建築物も報告時期も、特定行政庁ごとに違います。神奈川県内には12の市が特定行政庁として独自に定めていて、残りは県の所管。「うちのマンションは対象なのか」から整理しました。
**この記事の制度情報は2026年8月24日時点で、各自治体・官公庁の公式情報を確認したものです。**制度の内容・補助率・上限額・受付状況は年度によって変わります。申請前に必ず担当課で最新の内容をご確認ください。
大規模修繕や積立金の話は理事会でよく出ますが、建築基準法12条の定期報告はあまり議題に上がりません。管理会社が黙って処理してくれていることも多いからです。
ただ、これは所有者・管理者の義務として法律に定められたもので、報告先も周期も自分たちの建物がある市によって変わります。そして——多くの管理組合が意外に思うのが——マンションの建物自体はたいてい対象外なのに、エレベーターは毎年報告が必要という点です。
定期報告は4種類ある
まず全体像から。定期報告と呼ばれるものは、実は4つに分かれています。
| 種類 | 何を見るか |
|---|---|
| 特定建築物定期調査 | 敷地、構造、外壁、防火・避難施設の状態 |
| 建築設備定期検査 | 機械換気設備、機械排煙設備、非常用照明装置など |
| 防火設備定期検査 | 防火扉・防火シャッターなど(常時閉鎖式や防火ダンパー等を除く随時閉鎖式) |
| 昇降機等定期検査 | エレベーター、エスカレーター、遊戯施設 |
所有者または管理者が有資格者に調査・検査を依頼し、その結果を特定行政庁に報告します。報告を怠ると、建築基準法により罰金の対象になり得ます(100万円以下)。
マンション管理組合が最初に知るべきこと
一般的な共同住宅と事務所は、特定建築物定期調査の対象外です。 対象になるのは、病院、劇場、旅館、老人ホーム、店舗など、不特定多数が使う用途の建物です。
川崎市も、サービス付き高齢者向け住宅・認知症高齢者グループホーム・障害者グループホームに該当しない共同住宅は対象外としています。
では管理組合には関係ないのかというと、そうではありません。
昇降機は、住戸内に設置されたもの等を除いて、すべて対象です。しかも報告は毎年。
つまりエレベーターのあるマンションは、建物本体が対象外でも、毎年の報告義務があるということです。ここを「うちは共同住宅だから関係ない」と読み違えると、義務を落とします。
さらに、1階に店舗が入っている、上階が高齢者向け住宅になっている——といった複合用途の場合は、建物本体も対象になり得ます。判断が難しいときは、市の建築指導部門に用途と面積を伝えて確認するのが確実です。
神奈川では、市によって周期が違う
ここが実務上いちばん厄介なところです。神奈川県内には12の市が特定行政庁として独自に定めていて、それ以外の市町村は県の所管になります。
特定行政庁の12市:横浜市/川崎市/横須賀市/藤沢市/相模原市/鎌倉市/厚木市/平塚市/小田原市/秦野市/茅ヶ崎市/大和市
そして報告の周期がこう分かれます。
| 所管 | 特定建築物(建物本体) | 建築設備・防火設備・昇降機 |
|---|---|---|
| 横浜市・川崎市 | 3年ごと(用途ごとに定められた年度・受付期間) | 毎年 |
| 相模原市 | 用途によって周期・時期が異なる | 毎年 |
| 横須賀・藤沢・鎌倉・厚木・平塚・小田原・秦野・茅ヶ崎・大和 | 毎年の提出 | 毎年 |
| 神奈川県所管(上記以外の市町村) | 基本は1年ごと。維持保全が適切で知事が認めた建築物は2年 | 毎年 |
同じ神奈川県内で、建物本体の報告が3年ごとの市と毎年の市がある。 引っ越しや複数物件を持つオーナーが混乱するのは、当然だと思います。
市ごとの細かい違い
横浜市 — 特定建築物は3年に一度、用途ごとに定められた年度に提出します。建築設備・防火設備・昇降機・遊戯施設は毎年。独自様式を使っており、「調査結果表(個室ビデオ店等専用)」「調査結果表(地下街専用)」といった用途別の追加様式があります。定期報告オンラインシステムも用意されています。
川崎市 — 建築物は3年ごとですが、受付期間が用途で分かれます。
- 劇場・映画館・演芸場など:毎年6月〜9月
- 百貨店・飲食店など:毎年10月〜翌1月
建築設備(機械換気設備・排煙設備)は毎年。ただし常時閉鎖式の防火扉は3年ごとです。昇降機・遊戯施設は「前回の定期報告から1年以内」で、受付期間の制限はありません。問い合わせは建築指導課(044-200-2757)。
県所管区域 — 21市町村が対象で、提出窓口は一般財団法人 神奈川県建築安全協会(045-212-4511)です。横浜市は協会経由のほか、市への直接提出も受け付けています。
外壁の全面打診も、この制度の中の話
「竣工または外壁改修から10年で外壁の全面打診調査」——大規模修繕を検討している管理組合が耳にするこの話も、特定建築物定期調査の一部です。平成20年の国土交通省告示の改正で定められました。1989年に北九州で起きたタイル剥落による死亡事故が発端です。
ここで実務的に効くのが足場です。全面打診には足場か特殊な機材が要り、その費用が調査費を押し上げます。だから——
大規模修繕の足場と、打診調査のタイミングを合わせられないか。
これは検討する価値があります。別々にやれば足場代を二度払うことになるからです。逆に言えば、長期修繕計画を作り直すときに、この10年周期を組み込んでおくのが本来の筋です。
管理組合として確認したいこと
- エレベーターの定期検査報告が、毎年きちんと提出されているか(管理会社任せでも、義務者は所有者・管理者側です)
- 自分の市が特定行政庁か、県所管か。周期と受付期間が変わります
- 複合用途(店舗併設・高齢者向け住宅など)があるなら、建物本体も対象にならないか
- 外壁の全面打診の時期と、大規模修繕の予定が噛み合っているか
報告書は、建物の状態の記録でもあります。指摘事項が出れば、それは長期修繕計画に反映すべき情報です。「出して終わり」の書類ではなく、修繕の判断材料として使うと、費用の話にも効いてきます。
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出典
- 川崎市「定期報告が必要な建築物・建築設備及び定期報告の受付期間」 https://www.city.kawasaki.jp/500/page/0000056365.html
- 横浜市「定期報告に関するQ&A」 https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/tetsuduki/teikihoukoku/seido/07.html
- 一般財団法人 神奈川県建築安全協会「定期報告〔建築物・建築設備・防火設備〕」 https://kkak.jp/pages/19/
- 神奈川県「県内特定行政庁 問い合わせ先」 https://www.pref.kanagawa.jp/documents/67942/toiawasesaki.pdf
対象・周期・受付期間・様式は特定行政庁ごとに異なり、改正されることもあります。提出前に必ず所管の特定行政庁でご確認ください。